第29話 終焉に踊れ


「10!9!8!7!6!5!4!3!2!…1!!!」

キャノン砲の弾は今にも飛び出しそうだ…!

「やめろぉー!」

上空から光の矢が降り注ぐ。
キャノン砲に矢は全て命中した。
…どうやら、キャノン砲を撃たれるのを阻止出来た様だ。
しかし、攻撃を仕掛けた主は煙で良く見えない。

「…何をする!?」

上空に目掛けて紫色の薬を試験管ごと投げつける。
薬は爆発した。

しかし、煙の中から人影が現れる。

「…いい加減にして下さい!!」

キャノン砲の上に着陸したのは、ブレイラだった。

「…ブレイラ!」

ルナがブレイラを見つめて叫ぶ。

「…皆さん、まだ姫は戦っています。僕達は全力で…守りましょう!!」

ブレイラは地へと飛び降りた。

「…これからは、全力で守るのみです…今、あの人達はクローズ王国側に居ますから、レイオン王国全体に、プロテクトを張りましょう!」

ブレイラの杖に、皆は手を翳した。
レイオン王国全体は、虹色のプロテクトで守られた。

「僕達は余分な魔力を消費しないように…全体に張ったプロテクトです。魔力は結構消費します」

ブレイラは杖を構える。

「光は僕とルナさんが居ます…!スタラさんはビーストですから、此処は任せて敵が攻めてきたら…食い止めてください」
「…分かった…!…全力で守れっつったのは、ブレイラ、お前だからな!…ちゃんと守れよ」
「…はい、スタラさん」

スタラは、皆より前に出た。

「ティームさんとイリューファさんもスタラさんについてください」

ブレイラが事細かに指示を出していく。

「分かったぜ。行くぞ!イリューファ」
「うん!お兄ちゃん!」

二人はスタラの傍で構えた。

「…こんな感じ、でしょうか」

ブレイラはクローズ王国を見つめた。

「姫…」

ブレイラが呟いたその時、クローズ王城に大爆発が起こった…!

「…!!」

皆は驚愕する。

「まさか…あそこは鏡の間じゃ!!??」

ブレイラの顔は青褪める。

「ブレイラ!貴方は…シルヴィー様の下へ行きなさぁい…!」
「…ルナさん、でも…」
「つべこべ言わずに早く行きなさいっ!!…貴方は、シルヴィー様を守るんでしょぉ?」
「…ルナさん」
「プロテクトの光の力は、あたしが何とかする。ブレイラはシルヴィー様を優先しなさぁい!」
「…分かりました…後は頼みます…!!」

ブレイラはエナ達の目が届かない所からクローズ王城へと向かった。


一方、クローズ王城鏡の間では。

シュゥッ…!

鏡の間は一瞬にして炎の海と化した。

「…ケホッ!」

シルヴィーが噎せ返っている。

「…消火活動、かしらね」

シルヴィーが右手を前に突き出す。

「ウォーターストリーム!」

水の竜巻がシルヴィーの右手の掌から溢れ出る。
部屋の炎は消えるが、忽ちまた燃えてくる。

「ざんねんだけど…このひは消せないよぉ」
「そうかしら?」

シルヴィーは剣を再度構える。

「アレグレットのほのおはね…けせないんだよ。アレグレットがけすまほうをしないと、けせないの」
「…闇の炎、って感じかしらね?」
「そうかも」

アレグレットは剣を持ってシルヴィーに襲い掛かる…!

ザンッ…!!

「…った!」

シルヴィーの青いドレスは血塗れで、所々は破れている。
アレグレットも同様だ。

「…なかなか、アレグレットも…やるじゃない…侮っていた…わ」
「アレグレットもだよぉ…シルヴィー…」

アレグレットの翼は跡形も無い。
二人共、血がついた剣を握り締めている。

「やぁぁぁぁぁっ!」

シルヴィーは、王女とは思えぬ動きでアレグレットに襲い掛かる。

「…させないよぉぉぉぉっ!!!」

アレグレットは剣を持ち、防御の態勢を整える。

カキィィィィィィン!!!!!!!!!!

今までに無い激しいぶつかり合いを繰り広げる二人。

「…やぁっ!」

アレグレットが剣を撥ね返す。
シルヴィーは尻餅をつく。

炎は一層強まり、二人を飲み込もうとする。
二人の額には汗が滲む。

「もえちゃえばいいのに」

アレグレットは能面な顔でシルヴィーに言い放つ。

「…遠慮しておくわ」

シルヴィーは立ち上がる。
ドレスの所々は燃えている。

「…この部屋が燃える前に、アレグレット。貴女を…倒す」

シルヴィーは冷静だった。
剣を構えると、突き技を繰り出していく。

ギィィィィッ

剣がぶつかり合う鈍い音が唸るように響く。


カツ カツ カツ カツ カツン

鏡の間の外には、革靴の音が響いている。

「…はぁっ」

音の主はブレイラ。
鏡の間の扉の前まで来ると、その足は止まる。

「姫とアレグレットの戦い…僕は邪魔する訳にはいきませんね」

ブレイラは祈った。

「…どうか…」

服のポケットからネックレスを取り出す。
これは、「永遠の愛を誓う」というネックレス。
…所謂、結婚を意味する。

「…ノア様。姫に勝利を…もし、姫が勝ったなら、僕はこれを渡す…」
『ブレイラ』
「…?誰、でしょ…うか…?圧倒的なオーラ…これは…ノア様!?」

ブレイラの足は竦んでいる。
軈て、ノアの姿がうっすらと見えてきた。

『貴方は見守る事。シルヴィーはそれを望んでいます。決して中に入ってはなりませぬ』
「…姫は、傷つけることを拒んでいるから…ですね」

ノアは頷くと、消えた。

「…祈ります」


一方、レイオン王城前は。

ピキィ…

プロテクトに罅が入る。

「!!」

ルナの力は限界だった。
その時、聞き慣れた声が何処からかルナを呼ぶ。

「ルナさん〜!!」
「ラー、ワー…!!」

ルナがラーとワーの姿を見て安堵する。

「私たちも手伝います!ね、ワー」
「うん!勿論だよ、ラー」
「有り難う、ラー、ワー。…今すぐプロテクトに…」

ラーとワーはそれを悟り、ルナの傍らに寄ると、プロテクトに力をこめる。
プロテクトの罅は忽ち消え、プロテクトは大きさを増した。

まだ僅かに息があった兵を、スタラとティームとイリューファは倒していく。
エナ達に動きは無い。

「…まずはあたしが行く」

そう声が聞こえた。
エナが飛び降りてきた。

ストン

「さぁて。兵は居なくなってもあたし達が居るもの、圧倒的にこっちが有利だと思わない?」

エナはふふんと鼻で笑う。

「其処の三人さん♪あたし、エナが相手だよ…!」

ブォォオォッ!



エナの足元に魔方陣が浮かび上がり、突風が魔方陣から吹き上がる。

「打ちのめせ、神なる光。穢れを我が心に宿したまえ。泥に化せ、祈る者よ!アシッドレイン!!」

黒い槍の様な雨が、プロテクトを突き破る。

「ほらほらぁ、何してるの?ちゃんと守らなきゃ駄目だよ〜?」

エナは笑いながら雨を強めていく。

「…あっれぇ〜??本当に負けちゃうつもりなのぉ〜?あはははは!」

エナの笑いは止まらない。

「…?雨が止んじゃった」

エナが首を傾げる。

ドッ

「あ…」

エナは前にがくんと倒れる。

「…隙、有ったな。エナ」
「スタラ…あんた…っっ!!」
「この剣には光の力がある。お前の本属性は闇。本属性の弱点をつけばこっちの物だ」
「…油断…したっ」

背中の傷は嫌な音を立てて広がる。

「…うあ…っ」

エナの意識は薄れていく。
それを尻目にスタラはすたすたと前に出る。

「頭のエナは死に際。あんたらはどうする?」

スタラは上の奴等に問い掛ける。

「…こうなったら!」

クリスは叫ぶと、キャノン砲を撃つ準備を始めた。

「まずい…!ティーム、イリューファ!」

スタラは二人を呼ぶ。

「ティームは目をひきつける為に矢で攻撃をしてくれ」
「分かったぜスタラ」
「イリューファとあたしはあいつらに気付かれない様に上へ行く。イリューファ、良いな?」
「うん!スタラ」

イリューファとスタラは疾風の様に上へと上っていく。

「…俺の番だな!」

ティームはキリリと弓を構えた。

「俺がてめぇらを構ってやるぜ!ほら、来い…!!」

ティームは見下されているが、見下している台詞を言い放つ。
上では、クリスとコル以外はティームを狙う。
だが、スタラとイリューファが居なくなり、上に向かうのは気付いていない。
あっと言う間に二人は上に居た。

ザァッ…!

短剣と鎌の猛攻。
だが、相手も負けていない…!

「クリスとコルは任せろ!イリューファ。お前はその鎌で…やっておいてくれ」
「うん!スタラ!!」

イリューファの鎌を持つ腕は止まらない。

スタラはクリスとコルの背後に立つ。

「おい」

スタラは短剣を構えた。

「…お前ら、生意気な事してくれるなぁ…?クリス、コル」

クリスとコルは振り向く。

「お前らの相手は…あたしだ!」

素早い攻撃は、空中を舞うコルを叩き落す。
コルは苦しそうに呻く。

「…何するのよ…っ」

コルは聞こえるか聞こえないかの声でスタラに言う。

「…ああ?」
「…何するのよって言ってるのよ!」

コルは起き上がろうとするが、スタラが踏みつける。
コルは手に乗るほど小さい為だ。

「うぎゅ」

コルの虚しい嘆き。

「…てめぇ、大きくもなれないのか?…残念だな」

スタラはコルに短剣を向けた。

バチバチィ

スタラの背後で、電流の音が聞こえる。

バチィィ…ン!

「うあああっ!!」

スタラの体に雷が流れる。

「…てめぇ…クリス」
「コルをやるなら、手は抜かないわよ?スタラ」

スタラはよろよろと起き上がる。
コルは地に伏したままだ。

「やろうってのか?クリス」
「手を抜かないって言ったんだもの、戦う他に何をするのかしら?スタラ」

クリスは杖を手にした。


「覚悟しなさい」

地では、ジュエリーが擬人化し、ティームに牙を剥く。

「お前みたいな猫が俺を倒せるとでも思ってるのか…?ふざけた奴だぜ」
「…なめていられるのも今のうちじゃない?」

ジュエリーがティームをなめ回す様に見る。



あごに伸ばしたジュエリーの腕をティームは掴んだ。

「…触るな…。俺、猫は…」

ティームは、ジュエリーの目から逸らした目を、ジュエリーの目へと視線を戻す。

「大っっ好きなんだよな〜!あのふさふさした感じが好きなんだよ〜」

ジュエリーをむぎゅむぎゅと抱きしめるティーム。
ジュエリーが嫌がるのは、全く気にしていない。

「や・め・ろ!」

ジュエリーの杖から伸びるリボンはティームの首に巻きつく。

「うああっ!おい〜可愛がってやってるのによぉ〜?猫に女に…最高じゃねぇか〜」

女に目がないティームは完全に浮かれている様に見える。

ギィィ

ティームの首に巻きついたリボンをますますきつくする。
此方も、ティームの虚しい嘆き。

「…なんてな」

先ほどとは明らかに違う、冷静なティームの声。

…ドッ

「…何っ…」

ジュエリーは地に仰向けに倒れた。
腹部には、矢が刺さっている。

「俺が油断したかと思ったか?…確かに猫と女は好きだぜ?でも、敵は嫌いだ」

ジュエリーに刺さった矢をティームは引き抜いた。
ジュエリーの意識は完全に無い。

「暫く寝てな」

ティームはそう言い捨てると、ティームも上空へと向かった。


バチバチッ
カキィン!

雷の音。剣がぶつかる音。

「調子乗んなよ?…クリス」
「人の事言えないんではなくて?スタラ」

コルは…未だに伏せたまま。
意識は…無いようだ。

「これで終わりだ…!!星光刃!」

スタラの短剣には光を纏っている。
その短剣を、クリスの肩に突き刺した!
肩を押さえ、クリスは一歩後ずさると尻餅をつく。

「…白旗よ」

白い研究服の端を破ると、右手の人差し指と中指の間に挟めて左右に振る。
服の端を肩に当てる。

「…全くだわ」

クリスは後ろに倒れた。
スタラはイリューファの元へと走る。

「スタラ!クリス達は?」
「やっといたぜ!今度はこっち手伝うよ!イリューファ」
「ありがとうスタラ!…?お兄ちゃん?」

下から向かってくるのはティーム。
下を見ながらも、イリューファは鎌を振り続ける。

「イリューファー!!」

と叫びながらティームはやってきた。
ティームは腕を広げてやってきたが、あっさりイリューファは避ける。

「お兄ちゃん!」

イリューファはティームを一喝する。
ティームは気にせず、弓を構える。


スタラ達の下では、プロテクトを維持する為に皆、集中している。
兵は全て倒れ伏している。


一方、鏡の間では。

両者、息が荒い。
炎は勢いを増し、何時、何が起こるか分からない。

「…そろそろ決着を付けたほうがよさそうね」

シルヴィーが冷静に言う。
アレグレットは首を傾げているが。

「おわりにするってこと?」
「そうよ、アレグレット。こんな暑い所でずっと戦っていられるわけ無いじゃない」
「そうだね、シルヴィー。それじゃぁ、アレグレットがシルヴィーをころすね」
「…そうは行かないわよ?甘い考えが子供ね」

鼻で笑うと、剣を構える。


祈る。
戦う。
…そう、もう終焉は目前にあった。

さぁ、終焉に踊れ。

TO BE CONTENUED

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